モーターの特性について

モーターの種類について

モーターには大きく直流を使うDCモーターと交流を使うACモーターがあります。自動車では一般的にメンテナンス性に優れ扱いやすいACモーターが使用されます。

ACモーターの中でも誘導モーターと同期モーターがあります。誘導モーターは指定した回転数よりも実際の回転数が低いモーターで、回転数が一致していないものを指します。有名なものはかご型誘導モーターです。

一方で、指定した回転数と実際のが一致しているものを同期モーターと呼びます。有名なものは永久磁石を使用する永久磁石界磁式同期モーターと、永久磁石を使用しない巻線界磁式同期モーターがあります。巻線界磁式は電気を流して電磁石を作り出すことで永久磁石の代わりにしているのが特徴ですが、電磁石を作るために電力を消費するため効率のいい永久磁石界磁式が広く使用されています。

永久磁石界磁式には強力な永久磁石を作るためにレアアースが含まれています。それを嫌って最近は巻線界磁式や誘導モーターを採用しようとしているメーカーもあります。

交流モーターの種類 特徴
誘導モーター かご型 一般的な誘導モーターで電車によく使用される
効率の面では永久磁石界磁式モーターに劣る
永久磁石界磁式同期モーターを採用し始める電車もある
同期モーター 永久磁石界磁式 効率がいいので自動車で多く採用されている
永久磁石にレアアースを含む
巻線界磁式 古くから存在するが消費電力が高いためあまり使用されない
永久磁石界磁式に比べ発熱量が多い

エンジンと比べてモーターの特徴

モーターとエンジンのトルクカーブ モーターとエンジンの出力カーブ

これは日産のモーターの性能曲線です。トルクを見てもらうと分かりますが停止状態から最大トルクを発生させるのが特徴です。どういうことかというと信号で止まった時にアクセルを踏み込むと、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン以上の加速を出すことができます。つまりクラッチやトルクコンバーターが不要となります。

また回転数も特徴があり、1万回転まで回ります。ガソリン車と比べると圧倒的ではありますが、一方でトルクはどんどん落ちていきます。初速は力強く魅力的だが高速道路になるとそうでもない、というのがこのグラフで読み取れると思います。

停止状態で最大トルクを発生し1万回転まで回るためトランスミッションが不要になりそうですが、ガソリン車並みに加速させようとすると90km/hで10,000回転まで行ってしまいます。一方で180km/hまで持たせようとすると加速力が半分になりますのでマイルドになります。基本的にモーターはトランスミッション(ギアチェンジ)が無くても普通に走ることはできますが、ガソリン車並みの加速や最高速を持たせるには変速機を持った方がいいことになります。

トヨタのハイブリッドでは THS-II で2段変速、マルチステージハイブリッドで4段変速を持っています。加速力や最高速を求めるにはやはり変速機は欲しいところです。ただし鉄道などはモーターで走ってるにもかかわらず変速機はありません。

なぜ新幹線には変速機がないの?

同じモーターで走りますが新幹線には変速機がありません。まず前提として新幹線には自動車並みの加速はいらないので高速走行に思いっきり振ったとします。とはいえ日産のモーターですと180km/hくらいが限界ですが新幹線は300km/hを出します。

日産のモーターですと320N・mしか出ませんが、新幹線のモーターは630N・mもあります。モーター自体の大きさも関係してきますが、実は電圧も関係します。

モーターの高電圧化

トルクと電圧の関係

実はモーターは電圧を高くすればするほどトルクと速度が上がる特徴を持っています。電圧が高いほうが磁界で反発する力が強くなるためです(ちなみに反発するときに電流が流れ、電力を消費します)。

日産のモーターに掛かる電圧は350Vです。電池で駆動しているためこれくらいの電圧(とはいえ高電圧)ですが、新幹線の場合架線から給電できるので1,100Vの高電圧が掛かっています。そのため新幹線は停止時からかなりのトルクを発生できるので、減速機を使って300km/hの走行を可能にしています。

蓄電池を使って駆動する電気自動車やハイブリッド車は電圧を高めることで出力を高くしています。ちなみにトヨタは蓄電池の電圧は200V程度ですが、昇圧システムを使って650Vまで上げています。1,000Vくらいまで行けば変速機が不要になるかもしれませんね。