FFとFRの違い

これから紹介するのはあくまで一般的な話で、もちろん例外な車種も存在します。

見た目の違い

FFとFR

こちらの写真は上がトヨタ・クラウン(FR)となります。下がトヨタ・カムリ(FF)となります。両方とも大型セダンで同じようなサイズを見比べてみます。

デザインに関しては個人によって好みがあるので省略し、構造上の違いについて図に注釈を入れると以下のようになります。

FFとFRの違い

前輪とエンジンの位置関係

クラウンのように後輪駆動であれば前輪は操舵のみとなりますのでエンジンとタイヤは分離することができます。そのため後輪駆動はエンジンよりタイヤが前に出ているのが多いのが特徴です。その結果、同クラスの前輪駆動車よりもホイールベースが長くなります。

一方前輪駆動はエンジンと前輪は切っても切れない関係にあり、ほとんどのケースでタイヤはエンジンの下か後ろに配置されていることが多いのが特徴です。

前輪が後ろ寄り

先ほどの特徴にもつながるのですが、後輪駆動はできるだけ前輪を前に出すことができるためオーバーハングが短く、前輪駆動はエンジンによって位置の制約が出やすいためオーバーハングが長くなりやすくなります。逆に前輪とドアの距離(図、緑の矢印)にも差が出ています。

※オーバーハングとは図の水色の線のことで、車体の前方から前輪までの距離です。

スペックの違い

車種 クラウン(FR) カムリ(FF)
グレード 2.5LハイブリッドG 2.5LハイブリッドG
長さx幅x高さ (mm) 4,910 x 1,800 x 1,455 4,885 x 1,840 x 1,455
ホイールベース 2,920mm 2,825mm
オーバーハング 865mm(フロント)
1,125mm(リア)
975mm(フロント)
1,085mm(リア)
車両重量 1,750kg 1,580kg
前輪の重さ 860kg 950kg
後輪の重さ 890kg 630kg
前後重量配分 49:51 60:40
最小回転半径 5.3m (17インチ) 5.7m (17インチ)

タイヤの位置の違い

見た目の部分と同じですが数値上も前輪駆動車の方がフロントのオーバーハングが長くなっています。その結果前輪駆動だとホイールベースが短くなっているのがわかるかと思います。

前後重量配分の違い

前輪駆動だと駆動系がすべてフロントに集中するため前輪の方が重くなりますし、加速時には前輪に荷重を掛けないといけないためそういう設計になっています。一方後輪駆動だと分散するため、前後配分は均等にしやすくなります。

小回りの効きやすさ

エンジンの縦置きと横置き

外見ではほとんど分かりませんが、前輪駆動だとエンジンは横置き、後輪駆動だとエンジンは縦置きとするのが一般的です。上の画像はカムリとクラウンのエンジンルームですが、エンジンが横長か縦長かわかるかと思います。前輪駆動だとエンジンの下にトランスミッションや軸を収めるために、横置きにして折り返して立体的に配置するのが一般的です。対する後輪駆動はエンジンとトランスミッション、軸を縦に並べて後輪まで伝えるため、縦置きにして並べて配置するのが一般的です。

この影響で前輪駆動だとエンジンルームが左右広く使われ、旋回時に前輪があまり曲げることができず小回りが効きにくくなります。一方で後輪駆動だとエンジンルームの左右はまだゆとりがあるため、旋回時に前輪をより多く曲げることができるので小回りが効きやすくなります。

小型車だとエンジンが小さいため前輪駆動でも十分な前輪の切れ角が付き小回りが利きますが、カムリ程の大きさになってくると小回りに影響してきます。私もクラウンを愛用していますが、後輪駆動が好きな一番の理由はこの小回りが利く点にあります。後輪駆動だと大型であってもコンパクトカーなみに小回りが利きます。

一方前輪駆動であっても車幅を広げることでタイヤの切れ角を広げて小回りを効かせる方法があります。実際スバルのエンジンは(水平対向エンジンのため)横に長いこともあり、横幅を拡大して切れ角を保っています。5ナンバーの横幅(1,700mm以下)では切れ角を維持できないため殆どが3ナンバーなのはこれが理由の一つでもあります。