THS-IIの仕組み

概略図

前の章でも軽く触れましたが、THS-II(リダクション機構付き)の仕組みについては以下の図の通りです。

THS-IIの概略図

えらくシンプルですよね、すごいです。。。

各モジュールの説明

エンジン

THS-II(エンジン)

その名の通り普通のエンジンが付いています。ただしジェネレーターと直結なので準ガソリン車と比べると最高回転数は控えめで低回転のトルクを優先したエンジンとなります。

エンジンのすぐ横にクラッチがありますが、THS-II ではインプットダンパーと呼びます。しかし構造は普通のクラッチです。ハイブリッド車は頻繁にエンジンが停止したり始動したりと繰り返すため、エンジンの停止・始動の振動を緩和させるために付いています。そのため基本的にはインプットダンパーは繋がったままで、エンジンが停止するときや始動時のみ一時的に切り離されます。

長距離走っているハイブリッド車だとこのインプットダンパーが擦り減ってエンジンが滑っているような感触になることがあります。その場合は交換ですね。

ジェネレーター

THS-II(MG1)

ジェネレーター(MG1)は名前の通り発電用モーターです。プラネタリーギアを経由してエンジンと直結しており基本的には常に回っています

プラネタリーギア

THS-II(プラネタリーギア)

プラネタリーギアはTHS-IIの核とも言えるモジュールで、エンジンから発生したトルクをジェネレーターとタイヤに分配します。

ジェネレーターが通電していない場合は負荷が無くなるためエンジンのトルクはすべてジェネレーターに流れ込み、空回りした状態になります(暖気運転中やニュートラル時など)。

ジェネレーターが通電している場合は負荷が一定数あるため発電量や車速に応じてトルクが分配されます。具体的には停車時は一番タイヤが重たいのでほとんどジェネレーターに回って発電されますが、高速道路などで定速走行している場合はタイヤ側が軽くなっているのでジェネレーターの発電量は減り、ほとんどがタイヤへ分配されていきます。

モーター

THS-II(MG2)

このモーターは駆動および回生ブレーキで使用されます。

停車時にはタイヤが重くエンジンのトルクはジェネレーターに流れていきますが、その電力を使ってモーターを駆動させ発進させます。つまり THS-II は構造上エンジンからのトルクを直接タイヤに使えることは困難です。

リダクションギア

THS-II(リダクションギア)

モーターは高回転にしようとすればするほど高電流、高電圧が必要となりますし、モーターも大きくなってしまいます。新幹線のように25,000Vを与えられれば高回転で回せるんですが THS-II のバッテリーは288V、昇圧しても650V程度です。また自動車に搭載するため大きさにも制限があります。

基本的にモーターにはトランスミッションが不要なんですが、これらのように電圧、大きさの制限のため回転数や出力に制限が出ています。そのため THS-II ではモーター用にトランスミッションの役割を果たすリダクションギアが備わっています。

補足:モーターについて

トルクの発生条件

モーターがトルクを発生するのは「電流 x 電圧」となります。つまり低速時には電流を調整しながらトルクを変化させ、高速時には電流を最大にしつつ電圧をさらに昇圧させて高トルクを発生させます。THS-II ではバッテリーは288Vですが、650Vまで電圧を上げてトルクを増加させています。

モーターはトルクが高くなればなるほど回転数も増えるため、トルクを増やすことで高回転なモーター(=高出力なモーター)を作ることができます。

小型化の弊害

モーターを単純に小型化するとトルクおよび回転数が低下します。これはモーター内部の磁力(トルク)が弱くなるためで、磁力を高めるには磁界を発生させるものを大きくする必要があるためです。モーターに流れる電流はこの磁力によって決まりますが、小型化することで電流が減りトルクも減少するのが原因です。

つまり小型化しても出力を大きくしたい場合は「モーター内部の磁力を強くする(高価な永久磁石を使う、同線の密度を高くするなど)」「電圧を高くする」「変速機を使ってトルクを増幅させる」などの仕組みが必要となります。

THS-II では磁力を強くするほか、バッテリー自体の電圧を高めたりコンバーターを使って昇圧させています。リダクションギアも高トルク、高回転の両立を図るため備わっています。今後も磁力や電圧に関しては研究が進んで高回転、高トルクになっていくんだろうと思います。

THS-IIの動き

では次のページで THS-II が具体的にどう動いているか説明していきましょう。